【感想】書店員の読書感想メモ。『Helck(著:七尾ナナキ)』は王道のダークファンタジー

※当コラムはあくまで執筆者の私見と個人的な感想です。

 『Helck』(著:七尾ナナキ)という作品を知っているだろうか。
 この記事を執筆している時点では多くの人が知っているだろう。TVアニメが絶賛放送されているのだ。

 『裏サンデー』(小学館)にて2014年5月~2017年12月まで連載されていた作品だ。
 そう、2022年に新装版が発売されたとはいえ連載はかなり前の作品だ。
 ファンとして紹介するなら『Helck』は"反逆"の物語であるともいえる。

 あらすじはこうだ。
 魔族たちが住まう魔界では新魔王の座をかけて熱い大会が繰り広げられていた。
 「人間が憎い」そう言うひとりの屈強な勇者「ヘルク」が現れる。あたかも人間の心強い味方という風貌である。
 そう、「人間の勇者」が「新しい魔王」になるべく参戦するのだ。

 あたかもな登場人物たちとあまりにもシュールでテンポ良く展開するギャグな展開に、懐かしささえ感じるほど王道の少年マンガを体験させてくれる。
 連載当時からも、かつてこのような漫画を読んだかもしれないという感覚を覚えたし、それが心地よく名作を予感していた。
 昨今でいう所のエモさや逆説的な新鮮さを見せてくれる。

 しかし、「ファンタジーが舞台の王道ギャグ漫画」を身構えていたワケだが読み進めるとどうやらそうではなさそうだった。
 わりと容赦なく描写されるバトル、シナリオの端々にふと見せる不穏な影やどこか不安定な空気感は「もしやこれは重厚な"王道のダークファンタジー"なのではないか」と思わせる。
 ギャグの間に潜ませる功名な伏線とそれを予感させるセリフ回しにいつのまにか夢中になっているだろう。
 また、やたら明るいヒーロー・ヘルクには妙な不気味さがあり、あえて読者にもそう見せているようでもある。

 ネタバレはしない前提で冒頭に書いた"反逆"の物語という点について触れるとすれば、人間の勇者であるヘルクの「人間が憎い」というセリフと行動は人間への反逆か、運命への反逆か。
 最後まで読めばその答えはわかると思う。
 アニメが待ちきれなきゃ原作を読めばいいじゃないか。

 いろいろ書いたがここだけおさえておけばいいから太字にしておくと、
 『Helck』は読みやすくて読み応えがあって面白い。
Helck 新装版
著:七尾ナナキ
(C)七尾ナナキ / 小学館

Helck 新装版 :電子書籍のソク読み・無料試し読み
「人間滅ぼそう」と勇者は言った。1人の勇者の手によって魔王が倒されて3か月。