※当コラムはあくまで執筆者の私見と個人的な感想です。
街の喧騒の中にひっそりと佇む深夜営業のメイドリフレ「彗星蟲(コメットバグ)」。
そこで働く新人メイドの"ペロ"が初めての"ご主人様"を迎えるところから物語ははじまる。
深夜営業のメイドリフレというとアンダーグラウンドな想像をしてしまう人もいるかもしれない。
薄暗いネオンのイメージや、受付にはメイド服を着たアンニュイな男。
見るからに変なお店だが、この作品には表面的な印象だけでは語れない部分を表現する事にとても丁寧だと感じた。
少々フェティシズムは感じるが、直情的なエロさとかそういうのは一切ない。繊細で、感情を揺さぶるような、心に寄り添う物語だ。
新人メイドの"ペロ"は、はじめての給士では固く緊張した表情ではあったが、かなり真面目で純粋な心を持つ女子大生。
お仕事の中では、一見怖そうだったり変わっていたりするような"ご主人様"の内側…私たちにも共通するような悩みや深い傷を垣間見る。
リフレのサービスを通して、癒されにきた"ご主人様"とお話をし、時には心に寄り添うその一生懸命な姿や、真面目な意思に"ご主人様"たちは癒され、安心する。そして私たち読者の心にも元気を与えてくれる。
仕草や表情ももちろんだが、何気ないセリフや描写にもセキアユム先生のこだわりを感じるし、それが全体の質感を高めている。
美しい描線で描かれる癖の強いキャラクター、心情表現を何ページにも丁寧に描く構成は、読み始める時と読み終えた後では印象がまるで変わっている。
この作品は決して、かわいいメイドさんの楽しい日常であったり、オカルトで不思議な物語やサスペンスでもない。
まっすぐでひたむきに癒しを与えるために向き合うメイドさんたちと、癒しを求める"ご主人様"たちのヒューマンドラマだと感じる。
"ご主人様"たちに癒しを与える志はもちろんだが、店の外で深入りするのはアウト。そのようなプロ精神も語られている。
そのような繊細な現実部分もインタラクトする事で、より一層全体の質感を高め、没入させる作品作りになっているようだった。
人は見た目から第一印象を決めてしまうものだが、その本質は想像のつかないようなドラマ・物語の先にこそあるのかもしれない。
だれしも心に強さがあるように、弱さも同じように持っている。
弱音を吐いてしまいそうになる夜に、どこにも帰るところがないような夜に「彗星蟲」があったら救われるかもしれない。
そんな作品です。
また、物語の大筋としては"ペロ"の成長物語である中に、ひとりの"ご主人様"とのドラマにフォーカスしている。ここから、一線を越えてしまうのか、本当の優しさとはなにか、そういったテーマにも注目していく事になるだろう。
冥冥冥色聖域
セキアユム
(C)セキアユム/講談社
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街の喧騒のなかにひっそりと佇むメイドリフレ「彗星蟲」。ここはご主人様もお嬢様もいつでも帰れる場所。疲れた心に穏やかに、優しく寄り添ってくれる”メイド”がいる場所。そこで新人メイドのペロは初めてのお客様を迎えようとしていた。深い傷を抱えた彼を、ひと時でも癒してあげたいとペロは必死になり――。