あだ名は「王子」!凛々しいヒロインの初めての表情から目が離せない、『うるわしの宵の月』が注目度急上昇!

“秘めたギャップ”に注目!
自分だけが知る相手の一面が、心の距離を近づける。
 いきなり、筆者個人の話で恐縮ですが、友人にとても可愛い人がいるんです。
 入学式、入社式では男性陣をそわそわさせ、待ち合わせ中にナンパに遭ったことも。
 美しく年輪を重ねた今は、大人カジュアルを上品に着こなし、気の置けない仲になって長いけど、言葉が乱れるのを聞いたことがない。生粋の女性らしさにちょっと、憧れる。

 しかし、そんな彼女が私に送ってくるトークアプリのスタンプは、有名なプロレスラーがバイクにまたがり、背景が爆発しているようなものだったりするのです。(ちなみに添えられるコメントは「あそぼー」である。)

 世間が感じている像とは違う、自分だけに見せてくれる一面を知ると、心の距離が近くなる。

 新しい表情、意外な考えや気持ちに触れるたび、何かヒミツを打ち明けてもらうようで、嬉しい気持ちになったことはありませんか?

 『うるわしの宵の月』で登場するのは「かわいい」とは無縁の格好良い王子様系ヒロイン!
 ですが、そんな彼女が見せる「特別な表情」を知るほど、気になり、触れたい、もっと!と手を伸ばしたくなるのです。
思わず恋しちゃう、ドキッとする表情に、早くも注目度急上昇!
 ハンサムで新しいヒロイン像にときめきがとまらなくなる?本作の魅力に迫っていきましょう!
 物語の冒頭は朝のホームにて。
 電車に乗り遅れそうな二人の女子高生が「待って~!」と走ってくる様子に、閉まりかけたドアを押さえてくれたのは――、
すっごい美形のヒーロー!そりゃ新装開店並にバラも背負っちゃうよね!
 すらりと伸びた体躯、凛々しい顔つき、女性に優しく紳士な性格に、ついたあだ名は「王子」!
 しかし、それがこの作品のヒロイン!高校一年生の滝口宵ちゃんなのです。
スカート姿にびっくり!そう、こんなに格好良くてもちゃんと女の子なんですよ!
 空手まで使いこなす彼女は、運動神経も抜群。運動会では転倒した同級生を姫抱きにしてゴールした伝説まであるという……申し訳ないですがそこいらの男子よりもよっぽどうるわしい王子様な女の子!
 同級の女生徒からの差し入れは日常茶飯事で、告白までされることも……。
 しかし、宵自身はそんな周りからの扱いに少し複雑な想いを垣間見せます。

 男顔で、男前な性格だからと、「かわいい」とは無縁の彼女。
 自分には女性らしいときめきなんてきっと無理。と、10代にして諦観の境地に達しかねるのですが(早い早い!)、そこで、ボーイミーツガールしちゃうというわけなんだなぁ~。

✔ヒーローは肉食系王子?

 そう、学園には宵に加えてもう一人「王子様」と呼ばれる存在が。

 実家は有数の大富豪で、「会社を2~3個任されている」、「泣かせた女は3桁?」なんて噂が飛び交う彼。それが宵の一学年上の先輩、市村琥珀くんです。
さすが王子、出会ってすぐの台詞が飛びぬけてらぁ!
 噂の真相はともあれ。
 実際に人の目を引く、派手やかな容姿で、明るい性格なため、学年を超えて騒がれる琥珀。
 多くの女子生徒たちからまるでアイドルのように扱われる人当たりの良い男の子ですが、なんだかつかみどころがない。でも、そこがまた魅力なようで……。

 と、そんな“二人の王子様”がふとした拍子に出会い、物語は転がり始めます。
本作を描くのは今をときめくやまもり美香先生!

 男女の恋愛模様を瑞々しく描き出したオムニバス、『シュガーズ』での鮮烈デビューから、『ひるなかの流星』、『椿町ロンリープラネット』と、新作を打ち出す度に読者のハートを猛禽類の爪のごとく、わしっと掴んできた大人気作家です。
 
 素敵なのはやまもり美香先生の硬さのある男の子の描線。
 「王子」と呼ばれる宵ですが、琥珀と並ぶとアラ不思議。
 ふとした拍子に触れる手のひらの大きさや、腕の太さ、骨格の違いをわかるように描いてあり、凛々しい宵ちゃんも、ちゃーんと女の子なんだなぁとほのぼのしちゃうのです。

✔初めての表情から目が離せない!

「王子」と呼ばれる彼女も、恋は初心者なようで……。
 自分の青春を振り返り、思えば男性には縁遠い人生だったと評価する宵。
 男性陣いわく「滝口宵?無理無理。だって俺よりモテるじゃん!」とのこと(心の狭い輩である)。
 女子にはモテモテな王子様は意外にも恋愛には不慣れなようなのです。

 そんな彼女に、
 「それなら、オレがお姫様扱いしてやろーか?」
 と、冗談めかして接近する琥珀。からかい半分ではありますが、思わぬ行動に打って出ます。

 すると、生まれて初めての女の子扱い。そして「王子」と呼ばれる自分が思いがけずに受けとめる「かわいい」という言葉に、宵の表情にも変化が表れていくのです。
まぁ何、そのかわいい顔!キュンだな。

✔移ろう月のように変わっていく、二人の気持ちは?

 早咲きの梅の一輪、雨上がりに現れる虹、昔の人も春はあけぼのといっているように、美しいものに目を奪われるのは当然。
 「美しいな」と、思う宵のことを、つい目で追ってしまうようになる琥珀。
 けれども、次々と自分にだけ見せる、彼女の「特別な表情」に惹かれ、ただ見ているだけでは物足りなくなっていきます。

 一方で琥珀の急接近に戸惑う宵。
 始めはつかみどころもなく、女性に慣れていそうな軽薄な琥珀の言葉を鵜呑みにしてはいけない!と、警戒するのですが、重ねて接していく内に彼の本当を知り、その印象にも変化が訪れます。

 まだ恋と名前のつかないナイーブな二人の距離がだんだんと縮まっていく様子は危なげで、目が離せないもの。
 つかず離れずの二人の気持ち。だんだんと近づき、ときにすれ違う。
 形を変えていく様子は、姿の移ろう月のようです。

 宵は琥珀に対して「水に映る月のように、つかみどころがない人」と、感じながら、もっと知りたいと手を伸ばすように。

果たして、うるわしい「王子」宵ちゃんの恋の行方はどうなるのでしょう?
 気持ちを重ねて応援したくなるような、魅力溢れるヒロインたち。硬さを感じさせる男子の輪郭。作品を重ねるごとに色彩を増す画面描写、と。
 めきめきと実力をつけるやまもり美香先生の最新作『うるわしの宵の月』!

 次に流行るのはコレ!と女子たちの間で早くも話題沸騰の本作を見逃すべからず!です。

▼ 作品情報 ▼

うるわしの宵の月

著者:やまもり三香


(C)やまもり三香/ 講談社