【マンガのおすすめ神回】有馬記念で白黒つける!『みどりのマキバオー』8巻 「週刊109馬 たれ蔵の役目」日本一と命を懸けた宿命のライバルに決着!

※この記事は、あくまで筆者の個人的な考察や感想です。おすすめのマンガの面白さが伝われば幸いです。
競走馬にはどういうイメージをもっているだろうか?
競馬ファンたちが熱狂するのは、その高額配当の馬券のためだけではない。競走馬とはアスリートなのだ。
1レースに懸ける想いには、彼らの肉体的もどかしさや、血のにじむ日々の努力、それを操る騎手の想いも背中にのせ、さまざまなものが渦巻いている。

近年では、ウマ娘などのキャラクターIPはもちろん、競馬場側も努力と工夫を凝らし、若者たちに認知を広げてきた。
しかし、グルメや施設の華やかさだけでは語りきれない魅力はやっぱり、競走馬たちの歴史にある。

『みどりのマキバオー』は、『週刊少年ジャンプ』(集英社)1994年50号から1997年18号にかけて第一部(有馬記念まで)が、同年24号から1998年9号にかけて第二部(海外遠征編)が連載された漫画作品。
つの丸先生による、ユニークで面白い競走馬の成長劇を描いているのだが、その熱量はただものじゃない。
激アツなのだ。
コメディで有名なつの丸先生だが、ドラマチックな展開や友情、心理などの描写の繊細さが光っている作品なのだ。

神回というと、ひとつでは選びきれないが『みどりのマキバオー BIG VOLUME』8巻より、「週刊109馬 たれ蔵の役目」はチョイスしたい。
有馬記念の大舞台、マキバオーカスケード宿命の対決。
これまで命がけで走ってきたカスケードが全身全霊をもって挑む引退レースとなった。
幼い頃から、圧倒的実力差を見せつけられ、様々な大レースでしのぎを削りあってきた永遠のライバルである。
ロバに間違われるずんぐりむっくりなマキバオーとは違い、カスケードはまさにサラブレッドの体つきで、いつもクールな視線はレースへの熱意と勝利への渇望に向き合ってきた。
対照的ながらも、これまでずっと意識しあってきた仲でもあるのだ。

このレース中にカスケードの様子がおかしいと感じたマキバオー(たれ蔵)は、その体を悪くしながら命がけで走っていると知っている事で失速してしまう。
友として、ライバルとしてその体を案じ、レースの勝ち負けより体に無理させないでほしいとカスケードに懇願するマキバオーだったが…カスケードは「きさまは最低の競走馬だ…」と一喝する。
共にレースに出場するライバルたちを追い越し、全力をもって走りきるカスケード。
いつものクールな顔にも、苦悶の表情が広がり読者のわれわれの心をキュッとしめつける。
チュウ兵衛の親分の事もあり、ハラハラとドキドキ、そしてその迫真の表情の力強さに涙がこみあげてくる。

マキバオーの相棒であるジョッキーの菅助も、全力で走ろうとしないマキバオーにいいかげんにしろ!とカスケードの想いや、なぜ体を酷使してまで全力で走るのかを語る。

「日本の競走馬が世界でも通用するってな…それを夢で終わらせちゃだめなんだよ」
「お前だ!!たれ蔵!!お前が受け取らなくちゃいけねえんだよ!!」

これ以上、友を失いたくないマキバオーだったが、その想いに耳を傾け、覚悟を決めると共に、カスケードへの想いに答えるようにラストの直線でスパートをかける。

 "漆黒の帝王・カスケード""白い奇跡・ミドリマキバオー"白黒はっきりつけるため、心臓やぶりの坂を激走する2頭。
有馬記念を制するのはどちらか、カスケードの全力を破れるのか、涙なしには読めない神回があった。

【今回のおすすめ漫画】みどりのマキバオー BIG VOLUME / 8

著:つの丸
出版社:集英社
レーベル:ジャンプコミックスDIGITAL