負けられない戦いがココにある。『二月の勝者 ー絶対合格の教室ー』から読み解く中学受験の理想と現実。

※【再掲】2021年10月の記事です。
世間でも度々話題となる中学の”お受験戦争”。
その戦争に塾側の視点から切り込む『二月の勝者 ー絶対合格の教室ー』の魅力とは!?
圧倒的情報量とケースバイな受験物語で超話題に!
二月の勝者を読むと見えてくる、受験に立ち向かう子供たちの本当の”敵”…!!
プレッシャーで押しつぶされそうになる受験生…その背中は想像以上の重りを抱えているのです
冒頭でいきなりこんなセリフがあります。

「君達が合格できたのは、父親の「経済力」、そして、母親の「狂気」」(1巻 4P)

お勉強を頑張って合格を目指そう!という題材にこの衝撃。
残酷なセリフに聞こえますが、裏付けさえあれば確かにその通りだというセリフにも聞こえます。
理論的なセリフなんですね。

本作はそんな切り口から、あくまでも塾視点としての中学受験漫画となっています。
新しく赴任した新校長・黒木は残酷なまでに理論的で合理的な性格をつきつけます。
これでもかという情報量と正論を持ち合わせますが、それはこの受験戦争における本当の”敵”を知っているから。
ではその本当の敵とはなんだろうか…それはひとつだけではないのです。
負けられない戦いがここにある。中学受験は壮絶。
年間でおよそ150万近くかかる受験対策の授業料。
そんな大金を背負って子供たちは受験戦争い身を投じます。
だからこそ、成績が伸び悩む敵の所在は、本人か元の偏差値か…などと思われがちなのです。
でも本当は、「いまはスポーツを…」「無理のない志望校にしなさい」など親のモチベーションや、
友人との比較、本人の意思を尊重しない大人の意見なども本人のやる気を妨げるきっかけになるのです。
そしてその他にも…

本作ではそんな部分を掘り下げていくからこそ見えるヒューマンドラマがみどころです。
夢や希望が時には重しになる事もあるのかもしれません。

✔第一志望に受かる確率は?

現実を受け止め、塾講師たちはいかに成功させるのか
7割が受からない。そんなに厳しいのです。
そしてまだ幼い小学生が主役です。
両親や友達、そして”初めての受験”というプレッシャーは計り知れません。
いつも成績はよくても当日緊張から方程式がわからなくなる、頭が真っ白になってしまうなどよくあります。
そのポテンシャルを発揮しづらい場面があるのです。

本作では様々なケースから受験までの道のりを物語にのせて紹介しています。
フィクションとはいえ子供たちの想いまで丁寧に描いたそのリアルさは胸を打ちます。
たしかに小学校の高学年にもなれば内に秘めるものはありますね。
いまから子供の受験が控える人も、自分自身が受験生である人にも読んでほしい一冊だと思いました。

✔劇的な逆転をつかむのは?

ジャイアントキリングは登場するのか!?
さて、ここまで固めの解説をしましたが『二月の勝者』はあくまでも漫画、エンターテイメントであるのです。
受験という人生を左右するテーマだからこそのドラマが、痛快な展開も待ち受けています。

受験を控える親子関係、迫るプレッシャーと友人との人間関係、嫉妬、憧れ…
小学生の受験生たちの抱えるものはあまりにも大きいのです。
そんな彼らたちが紡ぐ涙、笑い、心ゆさぶる情熱はまさにヒューマンドラマ。

成績が悪くても少しのきっかけで人間成長するものです。
1巻から読んでいると生徒たちにも感情移入しはじめて、
まるで大河ドラマを見ているかのように、はたまた心配する両親かのように見届けたくなるんです。
読めば読むほど奥深く、没入するストーリー!
本当の意味でのジャイアントキリングは一体だれか…!!

手に汗にぎる受験戦争の行く末を見届けてください。

▼ 作品情報 ▼

二月の勝者 ー絶対合格の教室ー

著者:高瀬志帆


(C)高瀬志帆 / 小学館