青春が監獄に!?前代未聞のサバイバルが最強のエゴイストを生む!『ブルーロック』を見逃すな!

※当記事はあくまで執筆者の私見と感想による作品の紹介記事です。

突然ですが、サッカー観戦はお好きですか?
 2022年は4年に一度のワールドカップの年!
 そう、ついに来てしまう。
 「サッカーの話題を振られて困る」シーズンが……。
 実はこの記事を書く筆者はサッカー観戦を好んではしません。
 だってルールが難しい。選手が多くて憶えられない。面白どころがわからない、そして永久に説明できないオフサイド……。

 しかし! そんな私が大いに泣き、熱くなり、拳を握って応援した、今お勧めしたい作品がこちら『ブルーロック』なのです!

前代未聞! サッカーマンガなのに……、あれ? サッカーを、しない?
「おまえたちにはこの監獄で、サッカー人生を賭けたサバイバルをしてもらう」
んん? サッカーはどこへ……?(※ご安心ください。もちろん後程出てきます)
 『ブルーロック』は作中の直訳で「青い監獄」のこと。
 日本サッカーを牛耳る架空の組織「日本フットボール連合」が巨額の予算を投じて建てた5つの棟で構成される特別施設を指します。

 スマホ没収、私物も没収。家には帰れず、生活が管理された監獄のような環境で、収容された300名のサッカー少年たちは鬼のような特訓を行い、サッカー人生を賭けたサバイバルを強いられることに!
 そして全てのライバルを蹴散らし、1番のエゴイストになった者が、「世界一のストライカー」になれるというのです。

累計発行部数1000万部を突破!
 第45回講談社漫画賞少年部門の話題作がついに2022年10月8日にテレビ朝日系で放送決定!今、注目を集める本作の魅力はサッカーマンガの枠に留まりません。
 少年たちの熱い青春に、気づけばサッカーを見る目も変わっちゃう、かも?「俺が一番!」の才能覚醒勝ち抜きバトル。
その面白さに迫ります!

サッカーは11人で力を合わせて戦うスポーツ……だけど。
 主人公は日本代表に憧れる、高校生のサッカー少年潔 世一いさぎ よいち
 物語は全国高校サッカー選手権大会より始まります。

 残り時間わずかのラストチャンス。潔は敵陣営に単独で切り込み、ゴールを目前にしてキーパーとの真っ向勝負に挑みます。そんな彼に投げかけられるのが「力を合わせろ!」という監督の声。
 潔は“確実な1点”を取るためにマークのついていないフリーのチームメイトにパスを出しますが――、結果はチームメイトのシュートミスにより敗退。

 しかし、落ち込む彼の元に日本フットボール連合より“強化指定選手に選出されました”と、謎の招待状が届くのです。
大丈夫? 潔くん? 新手の詐欺や、深夜に出航する「希望」という名の船への誘いじゃない?
 「なんで俺が?」
 と、思いつつ、内心は嬉しい潔。しかし、フットボール連合の本舎を訪ねた彼を待っていたのは、同年代のサッカー少年299名。そして、日本フットボール連合が“日本をW杯優勝”のために雇った超・荒くれコーチ絵心甚八えごじんぱちだったのです!

✔W杯優勝に必要なのは究極のエゴイスト!

え? 日本がW杯で優勝? そんなことが可能なの?
サッカーは11人が力を合わせる競技? それは違うと言う絵心の答えは非常にシンプルなものでした。
 1991年のJリーグの設立から成長を遂げ、頭角を現した日本サッカー。W杯出場の常連国となって久しいですが、それでも厚く立ちはだかるのが海外勢の名選手たちの壁です。
 プレーが違う、ガタイが違う、運動能力が違う?

 いいえ、日本のサッカーを2流にしているのは、自己犠牲的な組織力だと絵心は語ります。必要なのは“アンチ”チームプレーの精神。
 そして、圧倒的なエゴイストオレサマ選手、つまり「ストライカー」を生み出してこそ、日本はW杯に優勝できると断言します。
 
「今までのサッカー観念は捨てろ。仲良し絆ごっこがやりたきゃ帰れ。」
 サッカーは11人で力を合わせて戦うスポーツじゃない、相手より多く点を取る。誰よりもピッチで主役になれ。チームメイトを脇役にしろと。絵心は告げます。
 それはまるで悪魔の囁き。しかし、チームプレイに縛られていた才気あるサッカー少年たちの内心に燻っていた欲望でもあります。

――チームへの貢献ではなく自分の限界を試したい。

 こうして、参加ゲートを越えて正体不明の「青い監獄」へ、300名の少年たちは自ら望んで収容されていきます。 

最初の試練は鬼ごっこ!
 ブルーロックのルールはシンプル。
 300名の少年たちは互いに競い合い、勝者は監獄に残り、敗者は去る。
 
 そんな監獄内で初めに課せられた試練は同室となった12人で行う鬼ごっこでした。
 制限時間136秒。ボールに当たった一人がボールを保持する鬼となり、ボールをぶつけ合う。最後にボールに当たった一人が退場。
 しかし、この退場はただの退場ではありません。
 日本フットボール連合が掲げた残酷な条件は「監獄を去る人間は一生日本代表になれない」とのこと。ブラフかどうかはいざしれず、サッカー少年たちにとっては死刑宣告に等しい事態です。

原作を手がけるのは金城宗幸かねしろむねゆき先生
 負けたら命を奪われるデスゲームとして映画化された『神さまの言うとおり』や、殺人から人生が一変してしまう『僕たちがやりました』などの話題作を手がけてきた腕利きの作家です。
 スポーツ漫画でありながら“負けたら最後”な緊張感に物語から目が離せない構成は正にお見事。
 監獄に残るのはナンバーワン。最後の一人を目指し、少年たちのサバイバルが始まります!

✔サッカーの常識を破壊する

サッカーに詳しくなくても『ブルーロック』は面白い!
 本作を読んでいて思わず唸ったのは、独創的な設定で今までのサッカー観を破壊していくことが却ってサッカーへの理解を深まるということでした。
 例えばストライカーの卵たちは全員が「フォワード」選手。

 恥ずかしながら、フォワードというポジションが何をする人か上手く説明できない私……だったのですが、全員がフォワードだと、サッカーはどうなってしまうのかを見せられて納得。
ブルーロック内の試練として、独自ルール点取りサッカーに挑む潔たち。全員がフォワードだとチームはバラバラ。それにしても「お団子サッカー」の解説キャプションが好きです。 
 現実のプレーでは、ディフェンダー、ミッドフィルダー、ゴールキーパーとポジションが分かれるのが当然。だからこそ、そこに解説はありません。
 しかし、『ブルーロック』では全員が点取り重視のフォワード。選手がボールに殺到してしまう子どものようなサッカーから抜け出すためには、それぞれの特性を活かしてポジション分けをしていく必要があります。
 それがわかりやすく、読者も理解を深めていくことができるのです。
新進気鋭の作家による、迫力ある画面構成
才能に目覚める少年たちの覚醒場面は必見!
 本作の作画を手がけるのはノ村優介のむらゆうすけ先生。高い作画力で原作者とタッグを組んでの作品を手がけてきた注目の新鋭です。力強い線画と、今らしい水墨画のようなグレーの処理を使いこなし、少年たちの中に燃える内なる炎を描き出します。

 スポーツマンガは人が多くて憶えられない……という私も大丈夫!
 注目したいのはそんな力みなぎる作画力で描かれる少年たちそれぞれの才能が開花する瞬間があるということ。
 サッカーにおいて活躍する能力と一緒に人物が浮き彫りとなり、自然と頭に入ってくるから不思議で読んでいて楽しいのです。
俊足でフィールドを駆ける 千切豹馬ちぎりひょうま
「お嬢」と呼ばれるベビーフェイスの彼。けれど一度走り始めると、ライバルをぶっちぎる爆速力で読者を魅了します。
華麗なドリブルで敵を翻弄 蜂楽 廻ばちら めぐる
ボールを運ぶドリブルを得意とする蜂楽廻。人を食った性格とつかみ所の無いふわっとした雰囲気に合う奇抜な超絶足さばきで相手を翻弄!
狙った獲物に食らいつく 雷市陣吾らいちじんご
最初は目立たなかった体力お化けの雷市陣吾も、敵陣営に粘着質につきまとうマークによって突出した“ウザさ”を発揮! どこまでも張りつく彼に、これはもうストーカーの被害届を出すしかない!
頑張れ、伊右衛門 送人いえもん おくひと
私の推しはストライカーを目指さなきゃいけないのに、頼まれたら断れない性格でずっとゴールキーパーをやることになる伊右衛門送人くん。ネタのような名前もまたグッドですが、彼もまた自身の得意を見つけ成長をしていきます。
そして、主人公、潔世一も自分だけの才能に気づいていくのです。

✔少年の中にいる“怪物”の目覚め

勝つために必要なこと
「俺の才能ってなんだ?」
 同じ房に収容されるライバルたちが次々に才能を伸ばし、突出していく中、自分の得意は何かと焦る潔。その中で、千切に「潔は空間認識能力が高い」と指摘されます。
 ほとんどの選手が自分の視野から情報を読み取る中で、潔の眼はプレー中もフィールドの全体を把握する。だからこそ、状況を判断してどう動くべきかがわかるのだと。
 自分の得意に気づいた潔はその力を発揮し、ブルーロックで生き残っていくのです。
試合を終えて「俺がこいつらの夢を潰したんだ」と相手チームのエースを見下ろす潔くん。
自分勝手に主役になる、勝つことの快感!
 同作で語られるのは、あくまで今までの常識を破壊したサッカー論。のはずですが、どこかそれは私たちの胸にも響きます。
 「誰かのための自分であること」は喜ばしい反面、組織に縛られる窮屈さを多くの人が感じたことがあるのではないでしょうか。

 勝ち残る中で潔は、「『勝つ』ことは『負ける』やつがいるということ。自身が夢を叶えるってのは、誰かの夢を終わらせることだ」と悟ります。
 同じ志を抱く、同志の夢を断つ、それは道徳的には許されないことのはずなのに。
 徐々に自身の内にある本能的な欲求が芽生え始めるのです。
高い作画力のノ村優介先生ですが、巻を増すごとに更に力をつけ、その伸びしろは計り知れません。高揚の中にある危うささえ覗かせるような見事な表情です。
 少年たちが次々と覚醒する中で、絵心は「才能を覚醒」させろと言います。
 そう、一流のプレイヤーに必要なのは「まぐれ」では無く、絶対の方程式で百選に連戦する力、そのために猛特訓は欠かせません。
 作品を読んでいると、こういった才能に驕るばかりではなく努力して磨こうとする少年たちの姿に勇気と元気をもらいます。

 努力を重ね、才能を突出させ、得意分野で覚醒してライバルを蹴散らせ。
 勝負の果てに生まれる怪物的なストライカーとはどんな選手なのでしょう?
 サッカー熱に相まって注目度が高まる本作。スポーツマンガの枠を超えた、監獄サバイバル『ブルーロック』が見逃せません!

▼ 作品情報 ▼

ブルーロック

原作:金城宗幸 / 漫画:ノ村優介


(C)金城宗幸・ノ村優介/講談社