26歳DKの正体は…可愛いあの子の番犬くん!?平凡な恋がしたい『お嬢と番犬くん』のハードなスクールライフ!

昔は「3高」、今は「普通」?
 一昔前。日本が好景気に沸き、ギロッポンではジュリアナが流行り、ジャングルでは恐竜が跋扈していたころ……。「女性に好まれる男性の条件は、“3高”」といわれていた時代があります。
 ずばり、高学歴、高身長で、高収入。
 時代背景もあり「もっともっと!」と、向上心が後押しされ、自ずとその憧れも全てがハイスペックへと向いていたのかもしれません。

 さて一方で、現在。とあるマッチングサービスを提供するサイトによると、配偶者に選ばれる男性の条件として以下のようなポイントがあるそうです。
 すなわち「普通の人」

「ギャンブルとかやらなくて、暴力振るわなくて、普通にやさしい人がいい」
 不安定な社会情勢の影響でしょうか。特別何かが飛びぬけていなくたっていい、普通に穏やかな“平凡な日常”が求められているのかもしれません。
 どっこい、今年ピカピカの高校一年生となる瀬名垣 一咲せながき いさくちゃんの日常は普通とは程遠い!
 それもそのはず彼女の「祖父」は、いわゆるヤクザの極道である、瀬名垣組の組長! よって組の大事な孫娘である彼女にはかな~り過激な番犬君が付いているのです……。

 果たして普通に青春して、平凡な恋がしたい彼女の夢は叶うのでしょうか? 2023年9月よりアニメ放送が開始となり、話題沸騰中! 刺激的なスクールライフの開幕です。

 桜咲く3月。もうすぐ高校一年生になる瀬名垣一咲ちゃんが帰ってくると、目前に飛び込んでくるのはまるで三味線のBGMが聞こえてきそうな見事な入れ墨。
 そう、こんなに可愛らしい彼女は瀬名垣組組長の大事な孫娘。まるで任侠映画の世界に生きているのです。

 一般家系で育った彼女ですが、5歳のときにご両親を交通事故で失い、唯一の肉親であったおじいちゃんに引き取られたとのこと。そのおじいちゃんがね、まさかのヤクザの親玉だなんて、なんという極道シンデレラでしょう。

一咲ちゃんてヤクザの家のコなんでしょ
 幼くして両親を亡くし、世界が一変してしまった一咲。極道とはいえ、彼女の祖父を始め身内の皆はやさしく彼女を迎えいれてくれましたが、とりまく世間の目は冷ややかなものでした。
 小学校・中学校と、周りには避けられ寂しかった一咲。友人もできず、青春もできなかった彼女だからこそ――高校生になったら地元を離れ、穏やかで平凡な日常を送りたいと思いを募らせます。

 ヤクザの家の子であることは隠して、たくさん友だちを作って、それで、恋――するんだ……。
 そんなふわふわと少女らしい砂糖菓子のような夢、の背後に立ち込めていく黒い雲。そう、彼女には恐ろしい番犬君がついていたのです……。

✔番犬君は男子高校生?

「一咲さんに恋なんて早すぎますよ」
 両親を失い、寂しがる幼い一咲に愛情を注いで育ててくれたのは、一咲より10歳年上の瀬名垣組の若頭、宇藤 啓弥うとう けいやでした。

 「俺が一咲さんのパパとママになります。おにいちゃんにもなります。ココでは血がつながっていなくても、みんな家族だから」そう言って啓弥は本当の家族のように。一咲を小さなころから面倒を見て、大事にして、溺愛し、育ててきたせいか……なんだか、随分過保護気質になってしまったようで……。
 今回の高校進学についても危険だと不安でいっぱいな様子。それでも入学に浮かれる彼女を見かねて――。

26歳男子高校生って、一体何年生なんだ?!
 純真な一咲さんに悪い男が寄ってきちゃいけねぇ。と誰より近くでお守りすべく、近く、そう、彼女の近くに控えるべく、26歳の啓弥はなんと……高校に入学してしまうのです!
 10歳年上のクラスメイトなんて誰か気づくでしょうと思いきや。気づき――誰も気づかない……、だってカッコいいんだもん。 むしろコミュニケーション上手な人あたりの良さで、一咲よりも一足先にクラスに馴染んじゃったりして……。
くそーイケメンめ! 格好良いから許す!

✔アオハルときどき任侠映画

つぶらな瞳。
 『別冊フレンド』にて連載中の同作は現在8巻まで刊行。そのどれもが水彩タッチの美麗な表紙が描かれます。
 そして同作の作者である、はつはる先生の独特の描画表現として突出しているのが瞳の描き方。
 特にあどけない一咲ちゃんの瞳は吸い込まれるほど美しく、啓弥でなくても思わず守ってあげたくなっちゃいます。
 水彩が滲むやさしい濃淡のタッチの中に、鉱石を砕いたような鋭いきらめきがある。繊細な線で描かれる少女漫画の浮遊感。
 そんな読んでいて心が浮き立つやさしい絵からは想像できない、急にはさまってくるものがある。

――そう任侠映画的展開である。
来た、突然の任侠映画的展開
 印象的な絵柄と、思わぬストーリー展開。様々な魅力がある『お嬢と番犬くん』ですが、ヤクザを隠して男子高校生を演じる啓弥の、お嬢のピンチに切り替わる狂犬っぷりも見所の一つでしょう。

 何しろこの一咲ちゃん、可愛いのに警戒心があまり無く、大変危なっかしい。それに加えて、ヤクザの孫娘なもんだから、敵対する組の者に誘拐されたり――と危険が目白押しまなのです。
 そこで牙をむくのが、番犬君!
ご覧ください。少女漫画ではあまりお見掛けしない感じの暴れっぷりです。
 アオハルときおり、暗雲。甘々一転、任侠映画。ハードとソフトの波状攻撃による独特のテンポが、気づくとクセになっていたり。
 私自身も読み進める内に、狂犬啓弥の登場の度「来たー!」と思うようになりました。

✔平凡な恋はできるのか!

恋がしたい理由は今ある恋に未来がないから
 高校生になったら――、平凡な日常を送ろう。たくさんの友だちを作って。勉強もして、それで、普通に恋がしたい……。
 一咲ちゃんがそう思うのは、実は今ある恋を忘れたいという動機があります。だって、ヤクザに恋したって叶わないから。
 そう! 一咲ちゃんは幼いころから自分を守ってくれた啓弥のことが、好きなのです。(な、なな、なんんだって~!? ごめんね、知ってたよ。)

 ともあれ、だからこそ高校では恋がしたいのに、近寄る男達に番犬くんが唸ること!吠えること!
 しかし、なんだか啓弥も家族愛以上に一咲ちゃんのことが気になるようで……?
二人の気持ちを知るのは読者ばかり!
 もどかしい二人の恋が一進一退する一方で、高校生活を共にする二人にはアオハルイベントが次々と! さらには隣組の跡取りが一咲に迫ってきたり? と、学園生活はいよいよ平凡から遠のいていくことに……。でも、どんなピンチも番犬くんがいれば大丈夫?
 けれども、お嬢の頼もしい番犬君はひょっとしたら一番の狼なのかもしれません!

▼ 作品情報 ▼

お嬢と番犬くん

著:はつはる


(C)はつはる/講談社