頭脳明晰な歴史上の人物といえば？
　頭の冴える先人として思い浮かぶのはどんな人でしょう？
　アインシュタイン、平賀源内、レオナルド・ダヴィンチ——、知者、識者、として様々な分野で歴史的な発明や発見・作品を残す偉大な天才たち。
　しかし、作戦や戦略を考える「軍師」に絞るならこの人の名が上がるのではないでしょうか。

　そう、三国時代に活躍した軍師：諸葛孔明！

　後漢王朝の末期。中国大陸の北側に曹操（そうそう）が魏、孫権（そんけん）が呉、そして劉備（りゅうび）が蜀とそれぞれが王朝を建てることによって三国時代の始まりでした。
　各国が競い、争い、勢力を競ったこの激動の時代に軍師として活躍し､名を残したのが諸葛孔明です。

もし、そんな英傑が現代の渋谷に転生してしまったとしたら？

　しかも毎日クラブで朝まで遊び明かす、いわゆる「パーリーピーポー」になってしまったら？もうそんな設定からとんでもなく面白く、気になっちゃうのがこの『パリピ孔明』なのです！

　アニメ化でますますアゲアゲ(^^♪↑絶好調↑。笑って泣けて、元気の出るストーリーにページを繰る手が止まらない？
　読む人を夢中にさせてしまう巧妙な罠に気が付くとあなたもハマっているかもしれません！

最強の軍師：諸葛孔明が最期に望んだのは？
　西暦234年。中国の五丈原にて、50代半ばにして病に没した諸葛孔明は願っていました。
「次の人生は命のやりとりなどない……、平和な世界に生まれ変わりたいものだ……」
　
ハイっ！オーダー承りましたーーー！

　そんなしんみりした最期から切り替わり、彼の願い叶って転生しちゃった先は……地獄？
　いいえ、ハロウィンで若者たちのバイブスぶち上がりな渋谷のど真ん中だったのです！（も～う！発想が面白過ぎます！）

　普通の方ならパニック必至な状況にも関わらず、さすが諸葛孔明！「なるほどここが地獄」。と、したり顔で状況を受け入れ（笑）、コスプレイヤーと勘違いされたまま、騒がしく、賑わうクラブへと連れていかれてしまいます。
　
　聴きなれない騒音と、落ち着かない照明に翻弄されてしまう孔明。そこで運命的な出会いを果たすのです。

軍師が現世で新たに仕える「王」として選んだのは？
　渦中の直中で、美声を披露していたのはまだ駆け出しの新人アーティスト月見英子（つきみえいこ）でした。
　EIKOとして売り出し中の彼女は駆けだしたばかりの新人アーティスト。
　渋谷にあるのCLUB「BBラウンジ」でバイトをしながら歌手を目指すものの、なかなか上手くいきません。

「私の歌、もっと多くの人に聴いてほしい」

　歌手として頑張るものの、上手くいかない毎日。

　家庭が複雑で、一度は駅ホームからの投身すら考えた彼女ですが、そんな彼女を救ってくれたのも音楽。
　自分に希望を与えてくれた音楽を自分も誰かに届けたい。自分が元気をもらったように自分の歌で多くの人を明るくしてあげたい。想いを伝える愛の歌に孔明は心を動かされていきます。

孔明は歌手EIKOの軍師となる！
　前世で数々の仲間を失い幾多の敵を倒し、戦場を走り抜けてきた中で、彼らが抱いたのは「戦のない世を共に作ろう」という大志。（まぁ各国がそう思って戦争は起こるのですが……。）

　孔明の中で決意が固まります。そうなれば、行動あるのみ！

「まずは仕事を斡旋していただきたい！」

　頭脳明晰の最強軍師も、今や無職の一文無し！また今後英子を押し上げていくためにも業界を流行や文化を深く知る必要があります。
　そこで紹介してもらったのは英子の勤め先。
　CLUB「BBラウンジ」のオーナー小林に掛け合うと

「一度孔明を部下にしてみたかったんだよな！」

　なんと強面ながら三国志オタクのオーナーは大勘違いして快諾、こうして孔明の第二の人生は順調に？軌道に乗り始めます。
　水を吸い上げる樹木のように現在に馴染んでいく孔明、一方で英子には様々な困難が訪れます……。

「あなたの歌を民草に届けるために、私がEIKOさんの軍師になりましょう」

　頼もしすぎる軍師：孔明を支えに立ち上がる英子。しかし、新進気鋭の音楽業界で名を轟かせるということは困難の連続です。
　クラブで出会った人気シンガーMIAには、ライブハウスの当て馬にされかけたり、野外フェスでは悪条件揃いのロケーションに観客はインディーズバンドJET JACKETのステージに流れてしまう、など苦難の連続！

　でも、大丈夫。

　そんな心のめげそう(´`)↓な困難にこそ、孔明は相手にとって不足なしと言わんばかりに笑うのです。
　絶対説明の状況を持ち前の機転と知略によって覆していく。
　この次々に上手くいく爽快感がたまりません！

同作を手掛けるのは勢いある二人のクリエイター
　原作を手掛ける四葉夕卜（よつばゆうと）先生は、小説、ライトノベル作家としてなんと異世界転生ジャンルも手掛ける新鋭。
　漫画を担当する小川亮先生は現代を舞台にしたハードボイルドな絵柄が注目されるな今期待の作家です。
　そんな勢いのあるタッグが織りなす同作だからこそ、リアルと不思議の塩梅が絶妙！
　四葉夕卜先生の心に響く台詞作りに合わせて、特に注目したいのが小川亮先生の描かれる変幻自在な孔明の顔芸です。

次々に変わる表情が面白い！
　普段はクールで凛々しい彼が、現代技術に驚いたり、

　悪い顔したり

　ご覧くださいこのしてやったりな顔

　私の一押し
　イッツパーティータイム！

　格好良すぎるのにちょっと笑ってしまう！
　軍師らしい彼も、お茶目でパリピな彼もまた素敵です。

　きらびやかな夜の街、華やかな音楽業界を舞台にくるくる表情を変える可愛い英子、格好いい孔明が大立ち回りする様子は目が離せません。
　綿密な絵柄とアップテンポなサクセスストーリーが絶妙にマッチしているのです。

孔明、道を照らす
　作中で印象的だったのは、天才と称された孔明が現在の文化を知りたいと英子に頭を下げる場面。
　「私、才能無いのかな」と落ち込む英子に、「才能とは生まれつきのものではなく学習の結果として身につくものと考えています」と語ります。

　新人歌手：EIKOの軍師となった後も、最新の音楽やトレンドを貪欲に研究し、学習する彼の姿が胸に響きます。
　同作の見どころの一つは、やはり困難という「問い」に対して孔明が導く「回答」の面白さなのですが、その正解を導くための楽しみながらの学んでいく様子が読んでいて気持ちよく感じました。　

孔明に支えられ実力をつけていく英子
　そんな孔明に背を押され、歌手としての本気に目覚めていく英子の様子がまたイイのです！

　諸葛孔明さんの本名は「諸葛亮」、よく知られている「孔明」はあだ名なのです。その由来は知られていません。
　私自身は孔は突き抜けた穴、明は字の通りに光。光明という言葉にも重なり、何やら星も見えない暗い夜に、進むべき道を照らしてくれるような存在にも思えます。

目指すはラブとミュージックの天下泰平！
　伝説の天才軍師が現在の渋谷に降り立ち、新進気鋭の音楽業界で知略を巡らせ、駆け出し歌姫の人気を不動のものへとしていく。

　アゲアゲ↑↑の元気が出るストーリーに気付けば夢中になること間違いなし！素敵な孔明の罠に是非あなたもハマってみてください。