生意気男子高校生×バツイチアラサー女性の火花散る関係。『プロミス・シンデレラ』から目が離せない!

年下男子×年上のお姉さんは好きですか?

 始めに懺悔いたします。

 私がオリジナルコミック即売会で発行した人生初の個人誌は「年下男子高校生と家庭教師女子大生」のほとんど家から出ない恋愛ストーリーで、全15話。総ページ数は150を超えました。

 なので、年下×年上にについて語り出すと、3000文字は優に超えてしまうので、短くまとめますが!
 この関係性の魅力は、力関係のアンバランスさと、年下男子のポテンシャル。そして、年上女性の包容力にもあると思うのですよ。やさしさに包まれたい。

しかし17歳の高校生男子×27歳のバツイチアラサーがぶつかり合う、『プロミス・シンデレラ』はそ~もいかない!
 ヒロインたるシンデレラは強くたくましく、けんかっ早く、相手の王子(?)は生意気でろくでなし。
 互いに素直になれずに喧嘩して、気持ちはすれ違ってばかり。そこが!もどかしくてたまらないのです!

 2021年夏よりTBS系列でのドラマ放送も始まり、注目度も急上昇。

 本気でぶつかり合うとき、相手の年齢なんて関係ない。
 アツくて、ハラハラ、キュンとして、続きが気になる最高な二人の恋の行方に胸をときめかせちゃってください!
アイツが謝ってきたって、絶対帰ってやらない」
 27歳の「早梅」は、夫と二人暮らしの専業主婦。曲がったことが大嫌いな負けん気の強い性格が災いして、ときにトラブルに巻き込まれることも。

 読んでいてびっくりしてしまいましたが、このストーリー。開始早々ヒロインの早梅はとんでもない不幸に見舞われます。

 外出中、電車では不良の男子高校生に絡まれ、家に帰れば愛する夫の不倫が発覚。それに次ぐ家出。ともすれば持ち出した全財産をひったくられて、なんと、公園の段ボールハウスで一晩過ごすことに……。
 うら若き主婦から、一晩でホームレスバツイチ女性に変身という、何をどうしたらそうなるの?ってくらいの怒涛の開幕です。

 正に厄を煮詰めて不運をトッピングしたような、アンラッキー全部乗せカスタム大凶日(「今日は絶対、外出ちゃダメ」って占いで言われませんでしたか?)。

 そんなとんでもない不幸の連続にもかかわらず、持ち前の負けん気でなんとかなると奮い立つ早梅が、悲壮感がなくてイイんです。

このシンデレラ、つよい。

✔生意気ろくでなし男子高校生「壱成(いっせい)」

「金に困ってんだろ?ほら、拾えよ」
高校生で裕福な彼の趣味は、ホームレスに金をばらまくこと。玄関で暗くて靴が見えないと、紙幣に火をつけるタイプですね!
 そんなダンボールハウス住まいの早梅に声をかけてきたのが、17歳の男子高校生の「壱成」。
 整った容姿で歴史ある老舗旅館の息子として、金銭に不自由しない彼は、ホームレスに紙幣をばらまき、拾わせるというなんともまぁ酔狂な趣味をお持ちでいらっしゃるのです。

 実は早梅の“メガマックス怒りの大凶日”に外出先で絡んできた不良こそがこの壱成くん。
 当時鼻を明かされた腹いせもあって、ご飯に乗せる納豆のように早梅にしつこくからみます。

 日を跨ぐ内に、いよいよ困窮する早梅に、もう一押しと、金銭をちらつかせる壱成。
 お金さえあれば世の中何でも思いのまま?と、思いきや。
まぁそーなりますよね!

✔火花散る二人の人生ゲーム

「家を貸す代わりにゲームしようぜ」
デュエルしようぜと、軽いノリで大人をもてあそぶ。う~ん、この王子(?)ろくでもない!
 とはいえ、家無し、仕事なし、縁者なしで困っていた早梅はなんだかんだと壱成の提案を受け入れることに。

 彼の提案は自分の気ままな「ゲーム」に付き合わせ、ミッションをクリアすれば報酬を出すという困った彼女をおもちゃにすること。

 しかもその内容も、廃墟で心霊写真を撮らせたり、誕生日の女の子に暴言を浴びせさせたりと、あまりに趣味のよろしくない内容に。
まぁそーなりますよね!
 生意気な子どもを教育して道を正すのも大人の役目ってものです。いいぞ早梅もっとヤレ!

本作の見どころの一つが迫力溢れる痛快な「一撃」の場面。
 そうなのです。メインテーマは色恋のはずなのに、とにかく動きが良い。パンチにスピードが乗っている、打突が重い。

 喧嘩っぱやい早梅の性格(私、この子の前世は江戸の火消しだと思うんですわ)も相まって、溜まる鬱憤を一掃する時代劇のような豪快なアクションは観ていて爽快です。
 尚、一時期私はタイトルを「プロレス・シンデレラ」だと思っていたことを告白します。

本気で叱ってくれて、自分を見守る大人の存在。
 相手を思うように掌で転がすつもりが、早梅に翻弄されてばかりの壱成。
 苛立ちを感じながらも常に本音でぶつかり合い、ときに自分を叱ってくれる“大人”の存在に段々と目線は変化していきます。

✔年齢や立ち位置の垣根を超えて、対等な目線で見つめ合う

「私は壱成と一緒にいるのが楽しいんだよ」
 互いの印象が大暴落の地の底から始まった二人(株式投資なら間違いなく「買い」です)。けれども生活を共にする内に、互いへの見方は変わっていきます。

 壱成が早梅に「大人」を感じるように、早梅は壱成の「子ども」らしい危うさを助けてやりたいと思うように。

でも今更、互いの気持ちに素直に、なーんてなれるわけない!
 お互いへの評価を改め始める二人。でも、なかなか意識するようには進みません(笑)。 
 いくら格好良くて裕福でも、「あんたなんて異性としてはムリ!」と思いっきり早梅に否定されてしまう壱成は、売り言葉に買い言葉で。

「俺だってなぁ!お前なんて、俺じゃなきゃムリだ!」
――、なんてナチュラルで無自覚な告白なんだ??
 しかし、喧嘩のような言い合いにより見事に思いは伝わりません。

 年下男子のもどかしい気持ち、年上女性の大人ならではの葛藤。
 けれども、そんな年齢の差やお互いの立ち位置に縛られない対等な二人の関係、本気のぶつかり合いは見ていて心地よく感じられます。

 アップテンポで予測できないストーリー展開。次々と登場する一癖も二癖もあるキャラクター陣に囲まれて、爽快な二人の関係はどう変化していくのでしょう?
 見守ってくれる早梅のまなざしを通して成長していく壱成。
 もどかしくも胸がしめつけられる、青い火花を散らせるようなアツい恋の行方はぜひ本編で。

▼ 作品情報 ▼

プロミス・シンデレラ

著者:橘オレコ


(C)橘オレコ / 小学館