男前女子の西園寺さんが、家事を通して向き合っていくものは?『西園寺さんは家事をしない』

人生は雑事の連続
 朝起きて、脱いだパジャマは洗濯籠へ。顔を洗ったら新しくて清潔なタオルで拭いたいし、トーストにコーヒーと簡単な朝食でも、用意したら洗い物が出る。もうこんな時間? と急いで羽織るシャツにはきれいにアイロンが掛かっていてほしいし、そろそろトイレットペーパーのストックも無くなりそう……。
 朝の短い時間でも家事のタスクは盛りだくさん! ましてやそこに一緒に暮らすパートナーや家族が加われば、その量も倍増しです。
 本当に家事って面倒くさい。でも仕方ありません。生きているんだもの。
  
だから、西園寺さんは家事をしない!
 2024年7月より、TBS系列にてテレビドラマが放送されている『西園寺さんは家事をしない』。なんと魅力的なタイトルなのでしょう。
 家事をしなくてもいいの? と、飛びつきかけますが、実はこの話、それだけではないようなのです。
 仕事や学業、イベントや付き合いに明け暮れて、帰ってきてからの家事が面倒というあなた、私は割と家事が好きというあなたにもお勧めしたいストーリーの始まりです。 

西園寺さんは仕事ができる男前女子!

ストーリーを手掛けるのはひうらさとる先生
 ドラマ化により話題沸騰の『西園寺さんは家事をしない』を手掛けるのは、大人の女性の心に寄り添う講談社の月刊誌、『BE・LOVE』にて同作を連載中のひうらさとる先生です。
 時代感覚に鋭く、ジェネレーションやジェンダーが抱える言葉にならない日常の悩みをストーリーとして昇華させてくれる巧みなストーリーテラーであり、共感を呼ぶコピーセンスの良さにヒット作品も多数。
 2004年に連載を開始し同じくメディア化された『ホタルノヒカリ』では色恋に無頓着な「干物女」というワードが炸裂。
 痛烈でありながら決して多様な在り方を否定しない描写に胸をすくような想いがした女性は多いのではないでしょうか? そんなひうらさとる先生が今回描いたのは…?
  
西園寺さんは働き盛りの男前女子! 
 バリバリ働くキャリアウーマンの西園寺一妃さんは38歳の働き盛り。
 WEBからアプリ開発まで手掛ける新進IT企業のプランナーとして、企画を次々に打ち出し、彼女の代表作であるアプリは1000万ダウンロードのメガヒット! 社内でも羨望の的です。美人で行動力があり、仕事もできる。格好いいよねと言われる彼女はついに!
 まだまだ稼げる内にと、家まで買っちゃったようで……、なんてたくましいの! (抱いて!) 
 しかし、そんな西園寺さんにも苦手なものがあるのです。
  
西園寺さんは家事は苦手
 西園寺さんが企画したアプリケーション、その名は「家事レスQ」。日常の家事をもっと楽しくをモットーにユーザーの家事の悩みに応える頼もしい存在なのですが……。
 産みの親である西園寺さんときたら、食器はパラフィン紙の容器を定期的に使い捨て、洗濯はシワにならない服を選び、全自動洗濯機に入れっぱなし! そんな彼女のモットーは「掃除はしなくても、死なない」。という。そりゃそうだけどなんてこった。
  
 確かに家事なんてしなくても生きていけます。しかし、こんなにも男前で、家事スキルが低いとなると遠のいていくものもある。 
 そう、西園寺さんは絶賛独り身を謳歌中!
 しかし、当人は「自由な生活にのびのびできることに満足」でもありました。などとこのように申しておりましたら。
  
来たよ、ハンサムがよ! 
 そんな彼女の前に現れたのはアメリカのシリコンバレー帰り、29歳の若きエンジニアの楠見俊直くんだったのです! あらやだハンサム。
 ベテランであり、ヒットメーカーの西園寺さんは、優秀な彼と組んで仕事をするように抜てきされ、あれよ、あれよという間に距離が縮まっていくのですが――、ここで畳かけるようにさらに急接近の出来事が起こるのです。 
 自宅で寛いでいた西園寺さんが近所で鳴り響くサイレンに気付き外に出ると、そこには楠見くんの姿が。
 なんと、彼の自宅は駅前のマンションで、火災に遭ったようなのです。災難を心配する西園寺さんを一度は突き放した楠見くんですが、その数日後、なんと家を追われた現在はインターネットカフェで寝泊まりしていると打ち明けます。
  
ハンサム、西園寺さんの家に来る
 災難により家を失った同僚を不憫に思う西園寺さん。
 しかも丁度彼女が買った一軒家には賃貸化することを見越して、使用していない独立した住居スペースまであるのです。これは渡りに船、これも何かのご縁、と。
 え~!同棲!の超展開!
 こんな感じで恋が始まるかとドキドキしていたら。 

西園寺さんの同居人!

楠見くんは子連れのお父さん 
 西園寺さんの家にやってきた楠見くんが連れてきたのは4歳のルカちゃん。 
 そう、楠見くんは妻と死別し男手一つで娘を育てるシングルファーザーだったのです。
 距離感の近さや楠見くんの謎の天然ムーブにドキドキしていた西園寺さんも「子持ちゆえか――!」と、これには納得。そしてほんの少しがっかり。
 けれど小さな子がいるからこそ放っても置けず3人の不思議な同居生活はこうして幕明けるのです。
  
楠見くんと家事
 仕事ができる楠見くんですが、家事まで得意というスーパーマンではないのがまた面白いところ。 
 しかし、独身で気ままな西園寺さんと違い、4歳の子どもを抱える彼にとっては、家事は避けられない生活の一部です。
 そんな彼ですが、一エンジニアとして家事の捉え方も独特。 
 新しい調理器具に興味津々で、研究と称して検証を重ね、美味しい煮込み料理を作ってしまうのだから驚きます。
 このように家事への向き合い方は人それぞれ。その違いの描き方が作品に深みを与えているように感じます。 

西園寺さんは家事と向き合う

誰かと暮らしていくということ
 『西園寺さんは家事をしない』は家事を切り口にした作品であるからか、アップテンポのストーリーに乗せ、日々の暮らしにふと浮かぶ、心のわだかまりに向き合うような描写が印象的でした。
 SNSでも話題になるように、例えばゴミ出し一つでも
 ①家中のゴミを集め
 ②袋に入れてしばり
 ③ゴミを出す
 のに、③さえやれば「ゴミ捨てしたよ~」と、男女を問わずパートナーに認識されるのはいかがなものか?問題(題名が長い)。
 その解決策として、西園寺さんはアプリで細やかな予備動作も含めた家事の見える化、それを均等に分ける平等化を提案するのですが――、実生活で起こる家事はイレギュラーの連続。
 生きている人間を相手にするからこそ一筋縄にはいきません。
 ではどうするべきか。 
家族でもあり、チームでもある。
 誰かと暮らすということ、一緒に生きていくということは、その人と心地よく、気持ちよく生活をこなしていくことでもあるのかもしれません。
 そしてそれは家族の形や、それぞれのキャラクター性によって異なり、正解はなく、だからこそ探していくことに喜びもきっとある。 
 生活空間を共にし、距離も縮まっていく西園寺さんと楠見くんの関係も気になるところですが、西園寺さんがどんな風に家事を通して自分の生き方に向き合っていくのかも楽しみです。