2021年アニメ化作品!知的好奇心を刺激!『天地創造デザイン部』の「生き物の“物づくり”の現場」が面白い

はじめに、天地創造があった。
万能の神は、すべてを造りたもうた。
光、水、大地を造り――
そして、そこに住まう生き物を、動物たちを――
――造ろうと思ったけど面倒になって 下請けに出した!?
そんな(無茶振り)発注を受けたのが天地創造社のデザイン部なのです!
何だ、この面白い設定!?

トンデモな地球生命の誕生背景を綴る書き出しに、読者は突っ込みつつも引き込まれていくしかありません。
2021年にはアニメ放送も始まる、今、最高にアツくて面白い「生き物の“物づくり”の現場」!
『天地創造デザイン部』の楽しさを紹介していきます!
私たちの便利な生活を支え、彩りを与えてくれる、
日々目にする、多くのデザイン。

デザインの本来の意味は「意匠設計を行う」こと。
視覚面だけではなく、機能も配慮した上で目的に合わせた造形を考えることです。
巨大な建築・構造物や、手のひらに収まる小さな文具など、大きさや用途も様々。
可愛い、恰好良い、利便性が高い、多くの洗練された“形”に出会う中で、
稀に「何かがおかしいデザイン」にも遭遇します。
――どうして、こんな変な形に?
――その機能いる?
素晴らしいデザインにも、センスが壊滅したデザインにもその背景には、きっと、持ち前のアイディアと感性、
ときにはクライアントの無茶振りにヤケになって意匠設計を行うデザイナーや、技術者たちの歓喜と苦悩があるはず!


もし、そんな風に地球上の生き物も造られていたとしたら?
舞台は神さま(クライアント)の発注により、生き物を造るという、架空の企業「天地創造社」のデザイン部!
地球に棲む生き物が持つ、ため息が出るような美しさ、
思いもつかないような素晴らしい機能性。
その背景にある理由とドラマが個性的なデザイナーたちを中心に展開していきます!

✔意外と知らない命の不思議が面白い!

キリンがハトを食べるって知ってた?
生き物がどういう風に造られていくのか。
一話読み切りのストーリー構成の基本は、依頼主である神さまの発注からアイディアの練り上げ、実際に運用可能か検証を経て、採用!納品へと進んでいきます。
当然、地球に存在している生き物がモデルですから
無謀やデタラメは通用しません。つまりカタチにすればいいってもんじゃない!

例えば格好いい「ペガサス」は
どうして架空の生き物なの?それにはちゃんと理由があるのです。
技術者の機能検証により突っぱねられるペガサス……。
さらにキリンの試作品では長すぎる首に脳貧血に……!
ストーリー内では「デザインする」ことが使命なため、
このように“形”から入り、その理由を説明していく過程が
大変わかりやすくって面白い!

なんでこの生き物ってこんな造りなの?その裏側を知っていくと
なるほど!という納得と、生き物が持つ非の打ちどころのない仕組みに感嘆します。
すべての“形”にはちゃんと理由があるのです。

そして生き物のデザインを考えることは生き方を考えるということ。
作品は知的好奇心が満たされる感動と
明日、誰かに話したくなる面白トリビアで満ちています。
なんと不老不死の生物が存在する?
身近な「あの生物」が実は老化しないと知り、仰天しました!
同作品は現在も講談社の『モーニング・ツー』で連載中ですが
コミックスでは話の末尾に登場した実在の動物の図鑑が登場!
巻末の参考文献の資料量にも驚かされますが、
私たちの生きる現実世界と結びついているからこそ、読むほどに常に驚きと発見があります。
角は贅沢品?本編を読むと納得の仕組みに驚きます。
誰が読んでもためになりますが、
特に週末は動物園(または水族館)でデートというそこのあなたは、
カバンに全巻忍ばせるべき(電子書籍ならスマートに携帯できますね…!)!

✔話を盛り上げる個性的なデザイナー陣

天地創造社・デザイン部員はわずか6名。
しかし、いずれも個性派の精鋭ばかりです
考えや感性が違うからこそ掛け合いが面白いのもまた醍醐味ですね。
そんな魅力的なメンバーの一部を紹介します!
「何か美味しいものが食べたいなぁ。よし、美味しい生き物を造ろう♡」
※コミックス1巻 案件4より
代表作は「牛」なデザイナー木村くん。
優しそうな顔の好青年ですが、造ったものは一通り食べちゃうグルメな肉食男子。
真顔でマッドな発言をします。
「あぁあ~かわいいいい、かちこおおい!世界一高級な毛皮を着せてあげようね~!」
※コミックス3巻 案件17より
見事なあごヒゲを生やし、筋肉質で大柄な海原さんは、可愛い動物たちを量産するギャップの持ち主。
代表作は「カンガルー」。可愛いですね。
「チョウチンアンコウのオスは、最期メスの内臓になっちゃうの♡ロマンチックでしょ~!」
※コミックス1巻 案件7より
パンクロック+ゴシックファッションを着こなす小動物的な彼女は冥土ちゃん。
愛らしい彼女基準の「カワイイ」は一般の感性とはほど遠く、読む内に悲鳴を上げること間違いなしです。
とんでもなく、狂気的な生き物を造っているようですが、
なんとこれが、お菓子にもなっている可愛いあの動物になります!
個性的なデザイナー陣に加えて
話の中で、「え、あの動物ってそうなんだ?」と衝撃の事実を知れるのも同作品の楽しみ方の一つです。

✔下請けはツライよ、物づくりの現場に共感!

「自由に作っていいよ」は地獄の始まり?
描いた絵に機能を持たせ、命を与えて動かすことができる。
天地創造社のデザイナーたちは、私たち人間からするとそれこそ神さまのような存在ですが、
やはり作中のホンモノの神さま(お客さま)には逆らえません。

光、水、大地を造り、そして、そこに住まう生き物を、動物たちを――
造ろうと思ったけど面倒になって 下請けに出しちゃうヤンチャなクライアント・神さまは、
ときになぞなぞのようなオーダーを出すことも。
生き物を造るデザイナーたちの現場も苦悩は尽きないようです。
リテイクの嵐の末、ひとつ前の方がよかったなんて一言。
クリエイティブな職の方には心に刺さるあるある要素も…
芸術と異なり、商業活動である仕事には納期があり、時間は有限です。
曖昧な依頼主のオーダーに振り回され、不本意な作品が世に出回る……なんてことは
現実では時おりありますが(不幸なことに)、そこは天地創造デザイン部!
ダメな“形”なんてない。それは生き延びるためにデザインをしているのだから。

このように苦悩や葛藤があるからこそ、世に残るような仕事が完成したときの喜びもひとしお。
それは現実を生きる私たちにとっても変わりません。
人間味あるドラマも同作品の魅力のひとつなのです。

✔誰かと一緒に作る喜び

ストーリ―の進行は基本社内のデザイン部での出来事(ときおり外出あり)。
何か特別な事件が連発するわけではありません。
それでもこんなに面白いのは何かを作っていく上でのアイディアの掛け合いがあるから。
本作の制作過程でも、原作者である蛇蔵先生・鈴木ツタ先生の両名と編集さんとで楽しいアイディアが練られ、
たらこ先生がやわらかで魅力的な描線でキャラクターや生き物たちに色彩と躍動を与え、
楽しい作品が完成されていくのです。

それぞれの強みや得意を活かし、考えを交えて一つの仕事を仕上げていく。
そんな作品づくりの背景があるからこそ、
天地創造デザイン部の「物つくりの現場」は生き生きとした熱を帯びているのかもしれません。

“形”から入る知的好奇心の探求はこんなにも面白い!
楽しくて、ためになるお仕事コメディ『天地創造デザイン部』で
生命の不思議に想いをはせてみてはいかがでしょう?
最後に個人的なおススメは
コミックス5巻 案件35
この世には浴びるほど酒を飲み、便器の蓋をなめつくす、キュートな生き物が存在します(実話)。