【感想】書店員の読書感想メモ。『正体不明と恐怖(原作:脊髄引き抜きの刑 / 著:フライ)』は気が付けば深みにハマる。

※当コラムはあくまで執筆者の私見と個人的な感想です。

 2024年01月17日に単行本が発売した『正体不明と恐怖』。
 『アイドルとヲタクの理想の関係』脊髄引き抜きの刑×『弱キャラ友崎くん』(イラスト)フライ異色タッグで送る青春ラブコメディ。
 4人の個性的なヒロイン、リズムの良いかけあいとユーモアは物語の邪魔をせず、フライ先生の美麗な線で描かれる画は非常に魅力的!
 読み始めはまっすぐで眩しいラブコメディだと思っていたが―――単行本の紹介でも公開される範囲でのあらすじはこうだ。

 事故が原因で顔に傷が残り、周りから距離をとられてしまっている高校生男子の石動かなめ。
 スクールカウンセラーの須賀田鳥子に仕事を手伝わされる羽目になり、相談を受けている4人の女子生徒と交流をすることになった。
 しかしある日、石動かなめは謎の人物に異常な告白を受ける。
 その正体不明の人物の正体は―――?おそらく4人のうちの誰かだと目星をつけてその謎を解決するために奔走する。

 たしかに開幕の、"ヒロイン紹介の場面"と彼女たちのキャラ性の端々に感じていた"秘密"や"不穏"な雰囲気は、このミステリーなストーリー構成のためだったのかもしれない。
 いわゆる、「あの人物は誰だったか」の謎解きラブコメといったジャンルになるのだろうか。
 最終的に誰だったのか、それが明かされるとき、それまで培った経験やストーリーの重みでカタルシスを感じさせてくれるという期待をこめたい。
 4人のヒロインとの交流を経て徐々に明かされるそれぞれの抱えている秘密の重みは深みにハマっていく感触もある。

 おそらくすでに隠されているだろう伏線や、彼女たちのセリフ回しからすごく丁寧に、功名に計算されているように感じた。
 1巻の時点なので具体的な部分は言及しないが、"秘密を持った女の子"のちょっと危うくて、ミステリアスな部分をこの特殊な状況は増幅させてより魅力的に見せている。
 正統派ラブコメの中に、ちょっと歪な影をまとわせて奥行をもたせた期待作だと筆者は思った。
 発売後2日で重版されるなど、その人気も納得の内容となっていると感じた。
 次が待ち遠しい作品なのでぜひリアルタイムで追いかけたいラブコメ作品。

要約すると"秘密のある女の子"って追いかけたくなる魅力があるよね?
正体不明と恐怖
原作:脊髄引き抜きの刑 / 著:フライ
(C)脊髄引き抜きの刑・フライ/講談社 

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事故が原因で顔に傷が残り、周りから距離をとられてしまっている高校生、石動かなめ。ある日、スクールカウンセラーの須賀田鳥子に半ば言いくるめられるように、彼女の仕事を手伝わされることになってしまう。4人の女子生徒と交流することになりこれまでと違った日々を送るかなめの背中に、突然、カッターナイフを突きつけられる。訳も解らず拘...