アニメ化で更に共感の嵐!『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』は“派閥戦争”に終止符を打つ、愛と笑いと「わかる!」のコミックエッセイだ!

「タケノコ派、それともキノコ派?」「朝食はパン・ごはん、どっち?」「何型の人が好き?」

学校・職場・ママ友コミュニティ、あらゆる現場で直下型地震のごとく突如発生するのが、この派閥の点呼。私たちは総じて仲間を作ることが好きである。これはもう群れをなすことで社会発展を遂げてきたヒトの生存本能だから仕方がない。
同じだったら嬉しい、違っていたらさみしい。さみしいくらいなら良いのですが、相手は間違っている。自分が絶対正しい。憎たらしい。いいだろう、戦争だ!と、までなってくるとちょっと苦しい。
――疲れてしまいませんか?

「犬派か、猫派か」。これもよくある問いかけですが、漫画家・松本ひで吉先生の答えはズバリ
そう、どっちかだなんて、もったいない!

  今や大人気の『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』は、天真爛漫な「犬くん」と、クールなツンデレ「猫さま」、その両方と暮らす松本ひで吉先生によるコミックエッセイ。
きっかけは松本ひで吉先生のSNSでの短ページマンガの発信であり、投稿後、累計1,000万以上の賛同を得ることで、コミック化・アニメ化を果たし、より多くの共感の声を呼んでいます。

見どころは、犬派、猫派、どっちも飼っていない派の派閥を超えて感じる「わかる!」のウマさ。
「猫派なんだけど、犬もかわいい!」「動物を飼ったことないのに、なんでこんなに気持ちがわかっちゃうの?」と、読めば思わず誰もが膝を叩いてわかり合える、そんな同作品が持つ共感の理由を探っていきます!
同作品の魅力の一つが、程よく力が抜ける丸みのあるこの絵と文字。ふわふわ綿菓子みたいな軽やかな「犬くん」と、謎の凄みがある重厚な「猫さま」の対比を、ユーモアをたっぷりと交えて、幸せいっぱいな日常として綴っていきます。

  「犬くん」がいて、「猫さま」がいるたのしい毎日。実際の名前ではなく「みなさまのワンコやニャンコに置き換えて楽しめるように、あえて個性のない一般名詞」にしたというのが松本ひで吉先生のコメントですが、ストーリーの主軸となるのがいわゆる「飼い犬・飼い猫あるある」です。
けれども、ここにお互いの対比が加わることでまるで落語のような面白さが生まれます。当然“彼ら”は喋らないのですが、松本ひで吉先生のまるでアテレコのような行動翻訳がキャラクター性を引き立て実にお見事。ゴハンやトイレ、お散歩やイタズラなど。それぞれの日常が対比によって際立ち、思わず笑ってしまう構成になっています。 でも、素敵なのは、比較をしても優劣をつけるのではなくどっちも最高!という姿勢。違いがあるからこそ、どっちの良さもわかるんですね。

✔猫好きも思わずメロメロ!「犬くん」のキュートなまなざし

もう、言葉は無用ですね。ワンちゃんの可愛らしさのひとつである「ばか可愛さ」。疑うことを知らず、純真で爛漫、そして人が大好き。そんな魅力をぎゅっと煮詰めたようなのがこの作品のトイプードル「犬くん」なのです。
まっすぐでいつも一生懸命な愛情を向けてくれる「犬くん」。けれど、完璧ではないからこそおっちょこちょいな失敗も。その姿がまた愛らしいんです。特にキラキラの瞳と、やさしい心は正に天使。どうやらワンちゃんって背中に翼が生えているようなのです。
 一方可愛いだなんて油断していると人間では及びもしないような、上手な生き方のヒントを教えてくれるのが「犬くん」のすごいところ。不思議な賢さにハッとさせられちゃいます。

✔犬好きのしっぽも振りきれちゃう!クールな「猫さま」の不器用なやさしさ

 偏見で申し訳ないですが、猫好きの方は猫ちゃんに対して絶対服従の方が多いのではないでしょうか。無敵な孤高の存在、猫。作品でも「猫さま」の背景のなんと黒味の強いことでしょう。まるで魔王のような凄みをみせ、その行動はひえ~もう許して~!と言いたくなるような勝手気ままさ。
しかし!ただの鬼畜な暴君ではなく、思いもつかないようなタイミングで不器用なやさしさや、守りたくなるような隙を見せるのが「猫さま」のズルいところなのです。そのギャップは、正に歓楽街の女王様。人とは思えない(実際に猫です)とんでもない「アメ・ムチテクニック」に悶絶必至です。
コミックでは貴重なデレシーンを自分のテンポで何度も反芻できるのがいいですね。

✔実は「動物を飼ったことがない」人にこそおススメ「わかる」の理由

ある統計調査によると、世界的なペットの飼育率は半数以上であるにも関わらず、日本人は約4割以下という話も。ペット飼育視点で見ると公共施設や避難所などのバリアフリー化が進んでいないことはしばしニュースでも取り上げられています。
飼ったことがある人にとっては常識でも、経験のない人にとっては未知の世界。それに当然動物が苦手な人だっているのです。そんなときは、動物が好きな人の目線を借りて“彼ら”を眺め、知ってみるのはどうでしょう。

作者である松本ひで吉先生の「好き」の対象は、犬、猫にとどまらず、動物を愛する同志にも向けられています。その様子のなんとまぁ愛情と幸福に満ちていること!
温かな表情から「動物を飼ったことがない」人にも、飼っている人の気持ちが伝わってきます。飼い主にとってかけがえのない家族であり、友人であり、相棒である“彼ら”と、人との関係を面白く読むうちに、不思議とその愛しさがわかるようになるんです。
ふふっと笑っていたら、やられます。この後わずか5コマ先の一言に涙がホロリとこぼれました。

どちらがではなく、どちらも。そこで初めて見えてくること

コミックでは始め、SNSで発信されていた単発での「犬くん」・「猫さま」の比較マンガが中心ですが、巻を増し、連続性を得ることにより“二人”を取り巻く時間や、種族を超えた家族としての関係性が浮き彫りになっていきます。
血や種にとらわれない、絆の尊さや、いつかくるお別れの話。決して軽いテーマではありませんが、気持ちを沈ませずに軽やかな跳躍で明るく語ってくれるのが気持ち良いのです。
例えば、人に比べて短い命をどう愛していくか、悩ましい問いへの答えもこの通り!
そして、その根本には家族に向けるまっすぐな愛情があるからこそ、いやみなくその気持ちを読者は受け入れることができるのです。
個人的なお気に入りはトカゲのレオパちゃんです。かわいいね、君。
犬好き、猫好き、トカゲ好き、みんなそれぞれいいじゃない。
きのこ、たけのこ?違った良さがある。米もパンも同じ炭水化物であり、血液型なんて輸血のときだけ気にすりゃいいのです。
もし自分とは違う「好き」に出会えたなら、ラッキー。

put yourself in one’s shoes

争うよりも手をつなごう。『犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい』は、両方を愛してごらん、もっと毎日がたのしいよ。ということを笑いとユーモアに交えて教えてくれるピースフルな作品なのです。